
ジャズ、ブラジル、ラテン、アフロなどを取りいれたスタイリッシュなダンスミュージックを数多く生み出し、海外デビューアルバム『The Rising Sun』収録の「I'm in love」が世界最大のダンスミュージックDLサイト「Beatport」で年間チャート1位を獲得するなど、輝かしいキャリアを持つSTUDIO APARTMENT(以下スタアパ)。DJ/プロデューサーとして活躍する森田昌典とマルチプレイヤーの阿部登によって2000年に結成されて以降、海外を視野に入れた活動を展開してきた彼らの名は、ともすると日本の、特にJ-POPを聴く人には馴染みが薄いかもしれない。
でも、auのCMに起用され爆発的にヒットしたキマグレンの「LIFE (Smart Sports ver.) -STUDIO APARTMENT Remix-」や、「Girls Award 2010」での過激な衣装のパフォーマンスが話題になった沢尻エリカ「Treasure」も彼らの作品。その他にも数え切れないほどの日本人アーティストのリミックスやプロデュースを手がけてきた彼らは、楽曲を小粋にドレスアップするサウンドマエストロとして、日本のダンスミュージック/クラブシーンを牽引、ひいては日本の音楽界の進化を支えてきた。
そんな彼らが結成10周年を機に、昨年、メジャーレーベルへ移籍。本格的にJ-POPシーンに殴り込みをかけるべく、日本語によるオリジナル曲の制作に初めて挑み、豪華アーティストを集結させて、見てびっくり、聴いてびっくりのアルバム『にほんのうた』を完成させた。
「海外で通用するダンスミュージックを作れる日本人アーティストは本当に限られると思うんです。そのシーンで頑張ってきた僕らの経験をJ-POPに反映させたいという気持ちが大きかった」(森田)
アルバムは幕開けから一気果敢に攻める。「新旧ディスコの融合がテーマ。全国のオールミックスなディスコ箱で流れるような曲を作りたかった」(森田)という「ミス ユニバース」は、SUとILMARIの扇情的なラップと黒木メイサのチアガール的な掛け声がエンドルフィンを大量分泌させる強烈なパーティーチューン。めちゃくちゃキャッチーでありつつ、プログレッシブでエッジも効いていて、《J-POPだけど、ダンスミュージックとしてちゃんと機能する》という本作の楽曲制作コンセプトを象徴する一曲になっている。

所属事務所NEW WORLD GROUPに縁の深い面々が一堂に会した「キセキのうた」も華やかなコラボで聴かせるナンバー。制作に着手した直後に東日本大震災が起こったこともあって、歌詞は復興祈念が裏テーマになっている。サウンドはスタアパの真骨頂。アフロビートを取りいれたハウスミュージック、というところが彼らならではだ。
日本語ダンスミュージックの先駆者、TRFの95年のヒット曲をリメイクした「オーバーナイトセンセーション」は洗練を極めた一曲。「当時からこの曲が好きだった」という森田が、クラブ現場で交流のあるSAMに直談判してコラボが実現し、YU-KIとSAMが新たにヴォーカルをレコーディングした。もともとソウルディスコ色の強いナンバーだったが、リズムとストリングスに厚みを加え、グルーヴと壮大さを増したクラシックハウスによみがえらせた。
過去に「BRAND NEW START」(『2010』収録)で共演済みの福原美穂と再びタッグを組んだ「オン ザ ウェイ」は、彼女のソウルフルな喉がうなるゴスペルガラージと呼びたいナンバー。スタアパとはそれぞれ絡みがあるものの、「組み合わせ」としては初となるMay J.とJAY'EDによる「二人」、KGとMiChiによる「誰より君だけを」では、スタアパが初めてR&Bデュエットを作り上げた。面識のないSEEDAとAISHAをキャスティングした「マイ デスティニー」は、これまでのスタアパの音を知っている人ほど新鮮に楽しめそうなナンバー。スリリング且つダークに迫る、スタアパ流のヒップホップを聴かせてくれる。

ケツメイシのRYOJIを迎えた「朝までBaby」や、氣志團を迎えた「羅武 暗怒 亞無亞危異」、雅-MIYAVI-と合作した「踊る侍」は、二人やスタッフが飲み友達だったという縁からコラボが実現したもの。特に氣志團との楽曲は、スタアパの都会的なイメージと氣志團のヤンキー文化がハイブリッドしたダンスロックで聴きものだ。

アルバム制作を振り返り、「キャッチーなサビのメロディ作りや、コード感を練った」と語る阿部。一方、森田は今のスタアパの音作りについて「一個一個の音の輪郭をしっかり出して、よりクリアなトラックを作ることを心がけている」とコメント。加えて、「音選びにしても、構成にしても「え?」「ん?」となるような意外性も僕らのキーワード」と語る。そんな二人にとってダンスミュージックは「世界共通の言葉」(阿部)、「ずっと追い続ける目標」(森田)だとか。 「世界的に考えると、僕らが作るトラックのクオリティって、まだ30点くらいだと思うんです。やっぱり全世界で評価されるダンスミュージックを作りたい。そういう意味で、自分にとってダンスミュージックは永遠の目標になるんでしょうね」(森田)
ストイックにダンスミュージックを探究し続けて10年。ハイセンス&ハイクオリティなサウンドを世界に向けて発信し続けるスタアパが、日本のフロアに照準を合わせ、本気で日本語ダンスミュージックを作り上げたのが本作『にほんのうた』。これは聴き逃し厳禁、話題になることマチガイナシ。彼らはこのアルバムで、日本の歌の可能性と面白味、サウンドデザインをまたひとつネクストレベルに引き上げた。
猪又 孝(DO THE MONKEY)